猫雪晴の本箱

つれづれなるままに本の感想を紹介

地方再生お仕事奮闘記【県庁おもてなし課】有川浩

台風が去って、かなり暑い1日でしたね。少し外に出ただけなのに、汗だくになってしまいました。こんばんは、猫雪晴です。

 

本日紹介するのは、有川浩さんのお仕事小説「県庁おもてなし課」です。2013年に錦戸亮さん・堀北真希さん主演で映画化もされた、人気作品です。恋愛小説の名手・有川さんが描く県庁のお仕事とは?

 

 

こんな人に読んで欲しい

・地元を盛り上げたい

・お仕事小説が好き

・地方再生、観光業に興味がある

・爽やかな恋愛模様が好き

 

あらすじ

 

観光立県を目指して高知県庁に発足した「おもてなし課」。早速県にゆかりのある人たちに観光特使になってもらうよう依頼する。しかし、いわゆる“ザ・お役所仕事”を脱却できず、民間感覚に欠けるその業務姿勢に、観光特使の作家・吉門から痛烈なダメ出しを受けてしまう。


やることなすこと悉く失敗してしまうおもてなし課メンバーたちだったが、口は悪いが的確なアドバイスをくれる吉門とのやりとりをきっかけにして、少しずつ“お役所仕事”脱却に向けて変化していく。

 

さまざまな障害を乗り越えながら、おもてなし課メンバーの意識が変わっていき、故郷を盛り上げる様を描いた観光エンターテイメント。

 

感想など

 

ありそうで意外になかった、役所の観光課が舞台の小説です。観光に関する専門的な話(グリーンツーリズム、ブランドショップ、レジャーランド化などなど)や、地方を盛り上げる方策などが数多く登場するのでリアリティがあるし勉強にもなりました。

 

物語を通して「民間感覚」と「お役所感覚」の対比が描かれていきます。主人公含めたお役所チームは、はじめはなかなかお役所感覚から脱却できずにいます。吉門やかつて県庁で働いていたもののとある理由で辞めてしまった・清遠との関わりを経て意識が変化していくさまが鮮やかに描かれていきます。

 

でもそこは有川さん、お仕事小説としても一級品ですが、恋愛要素もしっかり絡めてきます。

 

有川さんの小説に登場する人物たちは、男女問わずみんな“可愛い”と思います。ちょっとこちらが照れてしまうぐらいの、人間的な魅力がある人物ばかりです。

もちろん恋愛的な要素も有川小説の魅力ですが、登場人物たちのやりとりの中に、くすぐったくなるようなキュンとするエピソードがたくさんちりばめられています。また今作では、高知の土佐弁がふんだんに使われていて、より一層人物の魅力が増していると思います。方言にキュンとしてしまう方は、必読だと思います。



読者は主人公たちの成長を身近で見守って、安堵して本を閉じることが出来ます。後味爽やかなエンターテイメント小説です。

 

印象に残った言葉など

 

「『いろんなことができる』選択肢の中に、『何もしなくていい』ということを加えるんですね」

「お前が我慢できんばぁあの人がざらざらしちゅうがは、俺が県庁を辞めてからじゃ。先行きの心配をするには向いてない人を、先の知れん生活に添わせたがは俺じゃ。先が不安なことにさえせんかったらせんかったら、ちょっと考えなしやけど気働きの利くえいお母さんやったろう」

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

また素敵な本と出逢えますように。