小説家森博嗣が見ている世界【つぶやきのクリーム】森博嗣
あっという間に8月になってしまいました。暑い日は涼しい部屋で読書するに限りますね。今回紹介するのは、森博嗣さんの痛快エッセイ「つぶやきのクリーム」です。
森さんと言えば、言わずと知れた理系ミステリーの名手として有名ですよね。アニメ化もされたデビュー作「すべてがFになる」をはじめとするS&Mシリーズなど、数多くのシリーズものを書いていることでも知られています。実は多くのエッセイも書いている森さん。今回紹介するのは森さんのエッセイシリーズ第一弾です。
こんな人に読んで欲しい
・このところ自分の生活や将来に漠然とした不安がある
・森博嗣と言えばミステリーの印象しかない
・肩肘張らないで読めるエッセイを探している
あらすじ
森博嗣さんが半年ほどの間に思いついた“つぶやき”をまとめ、そこに捕捉的な文章を付け加えたエッセイ集。そのつぶやき数100個。見開き1ページで1つぶやきについて書かれており、内容は人生論から日常生活のちょっとした気付き、ビジネスについてなど多岐にわたる。一つ一つのつぶやきが、そのまま各タイトルになっている。
実はこれ以降通称「クリームシリーズ」として好評刊行されており、現在は9冊が出版されている。本作は記念すべき最初の一冊。森さんならではの独特な視点で、当たり前の物事に切り込んでいく、唯一無二のエッセイ集。
感想など
冒頭にも書きましたが、森さんと言えばミステリーのイメージをお持ちの方も多いと思います。実際かなりシリーズものを出されています。私もその森ミステリィのファンの一人なのですが、森さんは意外にもエッセイや新書もたくさん書かれています。
そしてそれが小説とはまた違ったエッセンスを持っていて、大変面白いのです。とにかく感性が独特です。我々が気にも留めていないことに注目したり、我々が当たり前として思考停止してしまっている事柄に対して、新たな切り口を提案してくれたりします。
ついつい悩んでしまうことも、「なんてことない」「どうしてそう考えてしまうのか」と言ってくれている気がします。言い方は若干冷たく感じますが、読み進めていくうちに事実を冷静に見て論理的思考に基づいて考えている故のことだと気づきます。
またこのクリームシリーズは森さん自身も書かれている通り、時事ネタは極力避けて「抽象性の高さ」を意識して書いているそうです。それは時間の経過で色褪せない内容を書きたいという思いからだそうです。
そんなこともあって、時を経ても読者に刺さる内容だと思います。
ここで私が気になったつぶやきをいくつか紹介します。
「つぶやくだけで良い。多くの普通の人の意見とは、その程度のものか」
「遠い人の悪口と近い人の称賛は簡単。遠い人の称賛と近い人の悪口は勇気」
「もう少し早く言ってくれたら良いのに、と思うことが多いが、それをもう少し早く思うべきだった。」
「気持ちを切り替えろというが、気持ちなんてものはどうだって良いから、次の手を打ちなさい」
いかがでしょうか。他にもハッとさせられる内容ばかりです。どこからでも読める構成になっているのも良いですね。
印象に残った言葉など
つぶやき(タイトル)で気になったものは上記に書いてあるので、内容で気になったものを。
出ていきたいのだが、どうしても土地を離れられない、という悩みを聞く。ほとんどの場合、その支配は「土地」ではなく、その土地にいる人間の「集団」のよるものであり、さらにほとんどの場合、単に本人が「支配されている」と思い込んでいるだけにすぎない。
多くのスポーツはチームワークが大切だが、目的は勝つことだ。勝つためにチームワークが必要なのであって、チームワークがスポーツの目的ではない。
世の中の問題のほとんどは、何が問題なのかわからない状態、問題だとさえ気づいていない状態なのである。(中略)問題を見つけることに比べれば、問題を解決することは、労力やお金をかけるだけで手法的な難しさは少ない。誰にもできる。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
また素敵な本に出逢えますように。