変態精神科医の不思議な治療【イン・ザ・プール】奥田英朗
夏と言えばプールに行きたいですよね。しかしコロナ禍でそれもなかなか叶わなそうです…。代わりと言ってはなんですが本日紹介するのは、奥田英朗さんの大人気シリーズである精神科医伊良部シリーズの「イン・ザ・プール」です。
こんな人に読んで欲しい
・最近精神的に疲れている
・クスッと笑える話が読みたい
・直木賞受賞の人気シリーズが読みたい
作品情報
精神科医伊良部シリーズは現在3作品刊行されています。
※( )内の刊行年数は単行本の発売年数です。
・「イン・ザ・プール」(2002年)
シリーズ第一弾です。第127回の直木賞候補となっています。今回感想を載せています。
・「空中ブランコ」(2004年)
第131回の直木賞受賞作品です。感想はまた別の投稿で。
・「町長選挙」(2006年)
シリーズ第三弾です。表題作含めて4作品収録しています。
伊良部シリーズは人気を博し、2005年には阿部寛主演で、テレビドラマ化しています。また2009年にはフジテレビのノイタミナ枠でアニメ化もされました。ドラマは未見ですが、アニメは当時何話か観た記憶があります。
あらすじ
総合病院の地下にある神経科の元には、今日も何らかの問題を抱えた患者達がやってくる。そこでは注射するのを見るのが趣味と言う、変人・伊良部と無愛想だが艶めかしい謎の看護師の2人が待っている。
プールで泳がずには居られない・プール依存症、陰茎硬直症、火を消したかどうか不安でしょうがない人、友達と繋がって居ないと不安な携帯依存症などなど…本人たちは至って真剣だが、読んでる我々はクスッとしてしまう人たちばかり。
さらに伊良部の治療方法がこれまた荒唐無稽で、笑えてしまう。寄り添い過ぎるでもなく、見放す訳でもなく、治療と言えるのか不明な行動ばかりをおこなう。しかし気が付けばいつの間にか患者を救っている。非常に不思議な物語。
感想など
くり返しになりますが、精神科医伊良部シリーズ第一弾です。一話完結型で進行していくので、どこから読んでも問題ない作品です。シリーズも3作品出ていますが、こちらもどこから読んでも構わないと思います。気になったものから読むと良いと思います。
あらすじにも書きましたが、実に様々な患者が登場しますが、読み終えての率直な感想は、「考えすぎはよくない」の一言だと思います。
現代は社会環境が複雑化するのに伴って、人間関係も非常に複雑化しています。仕事も家庭も学校も複雑になり過ぎています。私たちの周りは複雑なもので溢れていると言っても過言ではありません。
そんな複雑さの中に身を置いていると、考え方や行動もついつい複雑になってしまいがちです。知らず知らずのうちに体や心に不調をきたしてしまうのも当然です。
伊良部シリーズに登場する患者たちは、かなり誇張されコメディタッチで描かれていますが、読んでいるうちに他人ごとではないなと思ってしまいます。(でも深刻になりすぎず、クスッと笑えてしまうのは、奥田さんの力量の高さだと思います)
もっとシンプルに生きてみても良いのでは?
そんなメッセージが伝わってくる作品です。日常生活に疲れた方に是非読んでもらいたいですね。
印象に残った言葉など
「つまりストレスなんてのは、人生についてまわるものであって、元来あるものをなくそうなんてのはむだな努力なの。それより別のことに目を向けた方がいいわけ」
馬鹿と変人は癒し効果でもあるのだろうか。いざとなったら常識を捨てればいいと思えてくるのだ。
十代にとって、交遊関係は存在証明のようなものだ。最大の恐怖は、自分だけが孤立することだ。
世の中には、心配をかける人間と心配をする人間とがいる。(中略)後者が前者の分まで心配することにより、世の中は平和裏に運んでいるのだ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
また素敵な本と出逢えますように。