猫雪晴の本箱

つれづれなるままに本の感想を紹介

反転する世界【medium 霊媒探偵城塚翡翠】相沢沙呼

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暑い日が続いたかと思えば、急激に気温が下がってしまいました。寒暖差にやられております。こんばんは。猫雪晴です。

 

今回は何かと話題になっている相沢沙呼さんの「medium 霊媒探偵城塚翡翠を紹介します。先日続編である「invert 城塚翡翠倒叙集」が刊行されました。

 

続編が刊行されたと言うことで、感想を書いてみたいと思います。ネタバレはしないようにしていますが、気になる方は先に読むことをお勧めします。

 

medium 霊媒探偵城塚翡翠【電子書籍】[ 相沢沙呼 ]

価格:1,771円
(2021/8/16 01:28時点)
感想(5件)

作品情報

 

2019年9月に刊行されて以来、読書家界隈を何かと騒がせている作品です。表紙の遠田志帆(えんたしほ)さんの美しいカバーイラストも印象的なので、本好きでない方も一度はその表紙を見たことがあるのではないでしょうか。

 

第20回本格ミステリ大賞受賞
このミステリーがすごい! 1位
本格ミステリ・ベスト10 1位
SRの会ミステリベスト10 1位
2019年ベストブック

 

以上の5冠を達成しただけでなく、2020年の本屋大賞にもノミネートされるなど、多くの賞を総なめにしています。

 

こんな人に読んで欲しい

 

・新しいタイプのミステリーが読みたい

・話題の本を読みたい

・どんでん返しな展開が好き

 

あらすじ

 

推理作家の香月史郎は、死者の声を感じることが出来るという城塚翡翠と出会う。霊媒である彼女の力と、香月の推理で事件を解決していく。

 

巷では若い女性ばかりを狙う連続殺人事件が発生していた。犯人は一切の痕跡を残さずに犯行を積み重ねていく。知らず知らずのうちに犯人の魔の手が迫ってくる。抗うことができるのか、それとも…

 

 

感想など

 

ちなみに「medium(メディウム)」とは「中間、中庸、媒介(物)、媒質、媒体、生活環境、生活条件、手段、方法」そして「霊媒」などの意味があるそうです(裏表紙より)。

 

霊媒という言葉はあまり馴染みが無かったのですが、霊など超自然的なものと人間を仲介する人のことだそうで、イタコさんのイメージですね。

本作ではヒロインが霊媒として当時しますが、能力を発揮する条件や特徴などが細かく書かれています。

 

霊媒とミステリーの組み合わせは珍しい気がしますね。死者の声を感じられるヒロイン・翡翠の能力を使って事件を解決していくのが基本の展開となります。

 

冒頭にも書いた通り、ネタバレしてしまうと面白さが半減してしまいますので。なるべく避けて書こうと思います。

私も事前の情報はほとんど入れずに読み始めました。「伏線がすごい!」「完全に騙された!」などと言われていたので、かなり構えて読んでいたのですが…案の定騙されました!

 

ある程度予想していた部分もあったので、はじめはこんなものかな?と思っていたのですが、実際は予想の3段階ぐらい上をいってました(笑)

 

事件と事件の合間に差し込まれる、連続殺人犯側の視点が不気味で、徐々に物語が盛り上がっていきます。

そして最終章の爽快感。実に良いです。何となく違和感を感じながらも、普通のミステリーとして読み進めていただけに、一気に世界が反転した感じです。繰り返しになりますが、詳しく書けません。読んでいただくのが1番です。

 

物語の展開はもちろんですが、一番の魅力は何と言ってもヒロイン・城塚翡翠のキャラクターでしょう。物憂げな表情から、無邪気な笑顔への変化。少女の様な純粋さと大人びた立ち振る舞い。多面性があるキャラクターなので、物語を盛り上げます。

 

しかしあくまでも香月史郎の視点から物語が進行していくので、翡翠の様子は見た目からしか伝わらない、と言うのがポイントかもしれないですね。

 

騙されたい方、既存のミステリーにはない展開を読みたい方は是非お読みください。

 

 

印象に残った言葉など

 

停滞とは、終わらないことだ。始まることもなく、終わることもない。

 

「人を殺さずにいられる人間というのは、ただその不運が訪れていないだけで、そこに特別な差はないのかもしれません」(中略)「誰だって、ちょっとしたことで、人を殺してしまう。それを経験しないでいられるのは、ただ幸運なだけなのでしょう。僕たちは、ただそんな違いだけで、生きているのかもしれない」

 

魂とは、空間にあるのではないか。魂は、この世界とは相の異なる空間に蓄積された情報なのかもしれない。それは喩えるなら、ネットワークを介してクラウド上に重要なデータを保存する仕組みに似ている

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

また素敵な本と出逢えますように。